質・安全性・患者さんに優しい治療
3科クロスオーバーによる康生会武田病院の
心血管治療チーム
心血管治療チームについて
About
地域の高齢化とも相まって、心血管領域の治療需要は益々大きなものとなっています。
京都駅前にある康生会武田病院では、循環器内科・不整脈科・心臓血管外科が垣根のない一つの「心血管治療チーム」となり、さらに質の高い医療をご提供できるよう、日々努力しています。
当チームのこだわりの一つは、「当院では、心臓と血管の治療についてできないことは何ひとつない」ことです。治療の選択肢を広げ、その一つひとつの質を高められるよう努めています。
患者さんはもちろん、大切な患者さんをご紹介いただく開業医の先生方にもご安心いただけるよう、チーム、そして各科で研鑽を続けています。
チーム体制
Team structure
康生会武田病院
心血管治療チームの体制
当院の心血管治療チームは、医師(心臓血管外科、循環器内科、 不整脈科、麻酔科)のほか、看護部(看護師)、薬局(薬剤師)、 リハビリテーション科(理学療法士・作業療法士・健康運動指導士 など)、臨床工学科(臨床工学技士)、放射線科(放射線技師)、 検査科(臨床検査技師)。そして入院前から退院支援、地域の医療機関や介護施設などとの橋渡しとなる患者サポートセンターが協力し、 一人ひとりの患者さん・ご家族のサポートを行っています。
診療科ハイブリッドでの治療
Hidrid surgery
特徴的な取り組みの一つにペースメーカー・ICD のリード抜去術や末梢血管のステントグラフト内挿術を行っています。 24時間365日の救急体制を堅持しつつ、医師同士の素早い意見交換からコメディカルを含む大規模な合同カンファレンスまで適切に情報共有を行い、安全・安心で質の高い医療提供に努めています。
ペースメーカー等植え込みデバイスの「リード抜去」
長期間、心臓、血管内に留置されたペースメーカーやICDのリードは癒着してしまうため、抜くことが困難になります。 当科では心臓血管外科と協力し、このリード抜去を行っています。具体的には、エキシマレーザーシース、回転式ダイレーターシース等を駆使して癒着部分をはがし、リードを抜去します。 とくに京都ではリード抜去の対応施設が少ないため、特徴的な取り組みとなっています。
経皮左心耳閉閉鎖術
心房細動が起こると、心房内の血液の流れが澱んで、特に左心耳内で血の塊(血栓)が形成されやすくなり、その血栓が全身に流れていくと、脳梗塞などの塞栓症を引き起こします。
その予防として血を固まりにくくする抗凝固薬の服用が必要になりますが、出血などの理由で長期内服が困難である患者さんでは、代替療法として経皮的左心耳閉鎖術という治療方法があります。
全身麻酔下で、経食道心エコーと透視装置を用いて行います。足の付け根の大腿静脈から右心房にカテーテルを挿入し、心房中隔に穴を開けて右心房から左心房にカテーテルを挿入します。デバイスを左心耳内で広げ、留置し、左心耳を閉鎖します。
留置後は、抗凝固薬や抗血小板薬を組み合わせて服用していただきます。CTなどの検査で経過をみながら調整、減量します。
左心耳の閉鎖に問題がなければ抗血小板薬1剤のみの内服になります。カテーテルを用いて左心耳を閉鎖することで、塞栓症のリスクは減少し、ほとんどの患者さんで抗凝固薬を中止することができます。
心血管外科
Cadiovascular surgery
「患者さんのご負担が少ない治療」
「長期成績の良い治療」の両輪で
医療の質を高めています
地域の高齢化に伴い、どうしても高齢の患者さんを治療するケースが多いため、全身麻酔、開胸・開腹を伴う外科手術と比較して低侵襲な血管内治療の需要が高まっています。
例えば大動脈・抹消血管の動脈瘤では、当院では大まかに80歳以上の方、ぎりぎり75歳以上の方を対象にステントグラフト内挿術(以下、ステント治療)を行っています。
ただ、外科手術と比較し、ステント治療は追加措置が多くなる傾向もあるため、大まかに80歳を超えないケースでは長期成績の良い外科手術を当科ではお薦めしています。
外科的に人工血管に取り換えた方が、追加措置が非常に少ないため、長期的には低侵襲と言えるからです。
胸部大動脈ステントグラフト内挿術(EVAR)
冠動脈バイパス手術(CABG=coronary artery bypass grafting)は、冠動脈の閉塞箇所を迂回するためのバイパスを設ける治療法です。心臓に十分な血液が送られなくなる、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の治療で行われます。 当院では、人工心肺装置を用いるオンポンプ手術(on-CABG)、人工心肺装置を使わないオフポンプ手術(off-CABG)どちらにも対応しています。ご本人やご家族のご希望、患者さんの状態を総合的・正確に判断し治療を行っています。 尚、虚血性心疾患の主な治療法はCABGのほか、薬物治療、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が挙げられます。
弓部大動脈のオープンステント(FET)
弁膜症につきましては、高齢の方、特に80歳以上の方の大動脈弁狭窄症に対する手術が非常に増加していますが、全例が元気に退院されています。 年齢の数字よりも、生活が自立されておられれば、90歳以上でも手術は可能と考えています。 また僧帽弁閉鎖不全症につきましては積極的に弁形成術を行い、人工弁を用いない手術を施行しています。僧帽弁閉鎖不全症単独の場合は全例に形成術を完遂できています。
循環器内科
Cardiology
多様な心疾患を最適な治療へと導くゲートキーパー
循環器センター(循環器内科)は、循環器の⾎管内治療を主な領域としています。疾患の治療は⼤きく分けて「動脈硬化」「静脈疾患」「⼼不全」の3つです。
循環器分野は⽣活習慣と密接な関わりがあるので、患者さんと⼀緒になった治療が⼤切です。何より「患者さんに優しい治療」となることを⼼がけています。
循環器内科と⾔えば、⼼筋梗塞や狭⼼症など⼼臓そのものをイメージされることが多かったと思います。現在では⼼臓から派⽣し、⾜の動脈や静脈にまで⾄る「循環器全て」を診させていただくようになっています。
⼼疾患は⾮常に多様です。当院では循環器センター(循環器内科)、不整脈治療センター(不整脈科)、⼼臓⾎管外科が1つのチームとなって治療しているのが最⼤の特徴です。
なかでも当センターは、多様な⼼疾患症例を最適な治療へと導くゲートキーパー役として責任を果たしてまいります。
心血管インターベンション治療
当院循環器センター(循環器内科)における⼼⾎管インターベンション治療は、 ⼤きく分けて4つです。
- ❶心臓(PCI・・・冠動脈インターベンション)
- ❷EVT(抹消血管治療、抹消血管形成術)
- ❸下肢動脈癌のレーザー治療
- ❹深部静脈血栓(DVT)の血栓溶解療
エキシマレーザーによる血管内治療
当院のインターベンション治療における際⽴った特徴と⾔えるものの⼀つが、
急性期…例えば⼼筋梗塞時、⾎栓量の多い⼈にレーザー治療を⾏っていることです。
⾎栓量が多い場合、ステント治療を⾏うと、どうしても抹消塞栓症を発症しやすくなるのですが、レーザーは⾎栓を蒸散させるので、抹消⾎管の⽬詰まりを防ぐことが期待できます。
このレーザー治療(エキシマレーザー冠動脈形成術:ELCA)のもう⼀つの特徴は、⼼筋梗塞の根本的原因となる動脈硬化をレーザーによって蒸散させ取り除くことです。
⼀般に治療後、約10%の⽅は再び動脈硬化が進⾏し「再狭窄」してしまうのですが、レーザー治療はこれを防ぐことが期待できます。急性⼼筋梗塞にも効果を発揮するといわれており、今後さまざまな治療に活⽤出来ることが期待されます。
不整脈・不整脈治療センター
Arrhythmia
不整脈によると考えられるあらゆる症状に対処できるよう体制強化・質の追求を行っています
不整脈治療センターは循環器病のひとつである不整脈を専⾨にする診療科として作られた他の病院にはない特⾊を持った診療科です。診断困難な不整脈の⼼電図診断をはじめ、不整脈によると考えられるあらゆる症状に対処すべく、循環器内科と密接な連携をもって診療を⾏っています。
不整脈の治療の第⼀歩はその原因となる不整脈の確定診断となります。これは発作時あるいは症状出現時の⼼電図が⾮常に重要です。これを捉えるために運動負荷⼼電図や24時間ホルター⼼電図を⾏い診断します。これらの検査を⾏っても原因となる不整脈・頻脈の⼼電図が得られないときには、不整脈のカテーテル検査(臨床⼼臓電気整理検査)を⾏います。
エキシマレーザーによる血管内治療
⼼臓の異常な電気興奮による「⼼房細動」を治療するため、主に肺静脈から左⼼房に伝わる電気信号を遮断する治療がアブレーションです。
この遮断には、⾎管内から通したカテーテルで点状の焼灼を繰り返す「⾼周波焼灼術」、カテーテルを使ってバルーン(⾵船)を膨らまし、亜酸化窒素ガスを⼊れて冷凍凝固させる「クライオバルーン」、バルーンで膨らませてレーザーで線状に焼灼する「レーザーバルーン」などが⽤いられます。
レーザーバルーンは、連続で30点の焼灼が⾏えるなど、⼀点⼀点焼灼していた従来の⾼周波アブレーションと⽐較して⾮常に⾼性能です。
連続的なレーザー照射により焼灼に隙間が出来にくく、⽕傷の持続性も⾼いため、再伝導が少ないのが⼤きな特徴です。さらには、様々な形状にフィットし内視鏡で術野を確認しながら焼灼ライン・サイズを調整できるので、臓器のエネルギー伝達の可能性があるポイントを避けるなど、⾮常に繊細な調整を可能としています。
尚、このレーザーバルーン治療は、当科が全国で⼀番実施数が多い施設となっています。
ペースメーカー・ICD治療
意識消失、めまいなどの原因となる徐脈性不整脈にはペースメーカー治療が最も有効です。⼿術時間は1時間弱、ペースメーカー植え込みだけの⼿術であれば術後の安静は必要ありません。ペースメーカー植え込みは年間100例前後⾏っています。
徐脈性不整脈のみならず、左⼼室拡張をきたし⼼機能の低下した症例には積極的にペースメーカーを利⽤した⼼室再同期療法
(Cardiac Resynchronization Therapy、CRT) を⾏い良好な結果を得ています。
⼼臓突然死をきたすような致死性不整脈(⼼室頻拍・⼼室細動)を発症する症例には植え込み式除細動器(ICD)の植え込みを⾏っています(年間約40例)。対象となる患者には⼼機能の低下した症例や、⼼筋虚⾎の強い例が多いのでCRT 機能を持つICD の植え込みや、循環器内科と連携し植え込み⼿術を⾏っています。
アブレーションで治療可能な⼼室頻拍、発作頻度が多くなりそうな症例にはアブレーション治療も⾏いますが、⽣命予後のためICDの植え込みを⾏います。
注)ICD、CRTは認定施設でしか⼿術が出来ません。当院はこの治療の認定施設です。